一週間前にギックリ腰をやった。
二日間仕事を休み、だいぶ良くなったので仕事に復帰しているのだが、
右足が少ししびれるし、たまに魔女が腰に手を回すので、
リハビリをしに病院へ行くことにした。
以前ギックリ腰をやったとき、初めて腰の牽引をやった。
その時の機械というか装置というかは、
サイズがでかく、腰と脇をがっつりベルトで締めるタイプで、見た目が少し怖かった。
しっかり固定され身動きが取れなくなった僕は
「時計じかけのオレンジ」のアレックスを思い出し、
こんなのあんまりだよ〜と心の中で泣き言を言っていた。
またアレックス気分を味わえるのかと思って病院へ行ったのだが、
今回お世話になってる病院は違う装置だった。
見た目はマッサージチェアで、座ると機械が勝手にやってくれるタイプだった。
「座席が倒れます。」
「アームが降ります。」
と機械がしゃべり、ゆっくり動き出した。
座ったままの姿勢で天井を見ることになった僕は、宇宙飛行士の気分になった。
腰が締められ、ふくらはぎが締められ、
脇に挟まったアームはじわじわと上半身を引っぱっていった。
宇宙へ旅立つ気がした。
そして頭の中では「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れ出した。
僕の妄想は「時計じかけのオレンジ」から「2001年宇宙の旅」へと変わった。
機械の動きに慣れ緊張が緩和されると「美しく青きドナウ」が頭の中で流れた。
心地よかった。
しばらくすると隣りから「う〜〜っ。ん〜っ。ん〜っ。」と声が聞こえてきた。
チラリと声のするほうを見ると、僕と同じ体勢の男性老人宇宙飛行士がいた。
最初は彼も心地よく宇宙旅行を楽しんでいると思っていたが、
「2001年宇宙の旅」の妄想に浸っていた僕は、牽引機が人工知能HAL9000のように
暴走し始めたのではないかと不安になった。
そして、それから牽引終了のブザーが鳴るまでの間、
僕はマシーンにどこまでも引っぱられるのではないかという恐怖と戦った。
今日は熱と電気の治療と牽引治療、各10分間。
お会計は370円。
安くて楽しい妄想タイム。
癖になりそうだ。
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