名前も顔も声すら知らないけれど

「世間の汚い部分を見ちゃったね。」

「ーーーーー」

「すぐに向こうも諦めるよ。」

「ーーーーー」

「電話に出ちゃ駄目だよ。」

「ーーーーー」

「私だって・・・」

「ーーーーー」

「確かに私の場合とはちょっと違うけど・・・」

 

朝の喫煙所でキレイな女性がタバコを吸いながら電話をしてた。

ここは結構穴場なので朝はいつもすいている。

今日は僕を含めた3人のおっさんとその女性だけ。

自然と耳は女性の声を意識する。

 

「ーーーーー」

「そうだね。次はもっといい人見つけなきゃね。」

 

そう言いながらタバコの火を消し彼女は喫煙所を去って行った。

 

相談者のことを想像し、世間の汚い部分とやらを見せつけた交際相手を想像し、

今話してる相談事は見知らぬおっさん3人に筒抜けだよと思ったら、

なんだかクスッと笑ってしまった。

 

ごめんね。

 

そんなに落ち込まないで。君ならきっと大丈夫だよ。

 

もうすでに次のこと考えてるんだから。

 

クスッ。